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FES:機能的電気刺激(IVIS、ウォークエイド)
【背景】
20世紀までは、脳をはじめとする中枢神経は、損傷すると再生することはないと言われていました。しかし、最近の研究では損傷した脳領域周辺の細胞などから新たな神経回路ができることが明らかになってきました(脳の可塑性)。脳の可塑性はある程度まで自然回復が望め、それ以降はリハビリがさらに推進し修飾すると言われています。この損傷後の神経回復促進を目的にしたニューロリハビリテーションという概念が提唱されています。
【機能的電気刺激(Functional Electrical Stimulation:FES)とは】
ニューロリハビリテーションのアプローチの一つにFESがあります。 FESとは、筋もしくは末梢神経を刺激して麻痺筋を収縮させることで、その筋の随意性及び消失した機能を代償させることを目的とした治療法です。しかし、FESの理念が代償させることから、脳機能の再構築を促す様式へと変貌してきています。
【治療効果】
FESは脳卒中ガイドライン(2015年)で推奨グレードBの治療法です。
【治療の方法】
当院では主に *IVES (随意運動介助型刺激装置;integrated volitional control electrical stimulator) *ウォークエイド を使用しています。以下にそれぞれの特徴を説明します。
特徴
筋肉がスイッチを兼ねている自立型制御の一種であり、緻密な制御と運動学習が可能です。
装着、操作が容易で毎日長時間使用可能です。
同一筋肉部位にて筋活動電位測定と電気刺激を行うので誤作動がなく、従来不可能であった動きにまで機能を拡大できます。
随意運動介助型機能的電気刺激(IVES)の作用機序
治療対象部位の筋肉に比例した電気刺激を、リアルタイムにフィードバック(出力)します。
OG技研ホームページより引用
IVESの基本的使用方法
片麻痺上肢治療の基本となる電極貼付位置を示します。
手指伸展/手関節背屈 目的:手指伸展する動作をサポートし、コップを掴む等の動作時に「手指を伸展しやすく」します。 対象筋
肩関節屈曲 目的:肩挙上動作をサポートします。 対象筋
その他、症例ごとに検討し、他の筋肉を標的とすることもあります。
ウォークエイドは、歩行に合わせて腓骨神経を電気刺激することで、足関節の背屈を補助し、中枢神経障害による下垂足の患者さんの歩行を改善する歩行神経筋電気刺激装置です。特徴は次のようになります。
傾斜センサ内蔵/裸足で使用できる 本体に内蔵した傾斜センサで下腿の傾きを測定し、歩行パターンを検出 下腿の傾きが「後ろから前へ」 ≒遊脚期(かかとが浮いてから再び接地するまで)
片手で着脱可能/左右どちらの足にも使えるカフ形状
カフの内側に電極を設置/毎回同じ部位に刺激を行える 使用するごとに電極の貼付位置を決める手間がかからない。 一体型であることと合わせ、煩雑な配線の取り回しが不要。
単3形アルカリ乾電池1本で連続42時間使用可能
小型軽量で目立たない
TEIJINのホームページより引用
【適応】
- 脳卒中、脊髄損傷等により運動麻痺を呈している方
- 麻痺した手足がわずかでも動かせる方(表面筋電を記録できる方)
- 日常での意思疎通が可能な方。
【禁忌(下記項目に当てはまる方はこの治療の対象ではありません)】
- ペースメーカー等の体内植込み型医用電気機器を使用している方
- 金属インプラントを使用している方
- てんかんの既往歴または疑いのある方
- 麻痺肢に異常な疼痛、しびれのある方
- 皮膚の問題があり、電気刺激が困難な方。