体外衝撃波結石破砕
尿路結石治療について
尿路結石(にょうろけっせき)とは
尿路すなわち腎臓(じんぞう)、尿管、膀胱(ぼうこう)、尿道にそれぞれ発生ないしは存在する結石のことで、尿結石または尿石症ともいいます。
腎盂・腎杯で形成された結石が尿管に下降し、尿の通過障害を来した場合、疝痛(せんつう)発作といわれる七転八倒するほどの激しい痛みや血尿が起こりますが、これが尿路結石の典型的症状です。激しい腰背部痛・側腹部痛・下腹部痛のほかに、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。しかし、結石が腎盂や腎杯にある場合には軽い鈍痛程度です。性別では男性が女性より2、3倍多いほか、20~40歳代に発生頻度が高く、再発もこの年代に多くて、5年以内に3人に1人は再発するという統計もあります。
尿路結石の診断方法
単純レントゲン検査
大部分の結石は白い影として写りますので診断可能です。しかしながら、サイズが小さかったり、骨と重なっていたり、レントゲンに写らない成分のみでできている結石の場合は見落とすことがあります。また胆石、カルシウムが沈着した静脈やリンパ節など尿路結石との鑑別が困難なものがあるため、診断には注意が必要です。腹部超音波検査
腎臓の中や尿管の上部にある結石の場合は、その大きさや場所が確認できますが、尿管の下部まで降りた結石は直接確認できないことがあります。しかしながらそのような場合でも腎臓や尿管の腫れの有無や程度が判り、痛みが結石によるものか否か、早期の治療を要するか否かなどの判断に必要な情報が得られます。CTスキャン
カルシウム成分を含まない結石は、尿路の粘膜に発生したポリープやガンとの鑑別が困難なことが少なくありません。CTスキャンではいかなる成分の結石でも描出されるので、これらの疾患との鑑別診断が可能となります。
治療について
尿管結石の治療方針
4mm以下の結石
基本的には、鎮痛剤などの薬剤を使い、自然排石を待つ保存療法が中心になりますが,あまりに発作が頻回に繰り返したり,腎盂腎炎といって高熱を発する腎の感染症の原因となり,早急な結石の除去が必要な場合はESWL(体外衝撃波による結石破砕術)等の治療が必要になる場合があります。
10mm以上の結石
まず、自然に排出しませんので、ESWL(体外衝撃波による結石破砕術)等の手術が必要です。
5~9mmの結石
サイズが上記の中間にあたる場合、4mm以下の結石と同様にまず保存療法で治療しますが、排石まで時間を要し、水腎症で腎機能が悪化したり、腎盂腎炎で発熱したり,疼痛発作の繰り返しで日常生活の質が著しく損なわれる場合は、10mm以上の結石と同じ治療を行います。
腎結石の治療方針
腎結石は尿管結石と異なり、血尿の検査や健康診断などのX線検査で発見され激しい症状はあまり出ませんが、小さなものはいずれ尿管に下降し尿管結石の疼痛発作を起こしたり、腎の中で非常に大きくなり腎機能を傷害する場合があります。その治療は尿管結石ほど急ぎませんが、そのサイズ、合併症の有無により治療方針が決定されますので,泌尿器科専門医の受診をお勧めします。
9mm以下の無痛性腎結石
自然排石する可能性があるので発作に備えつつ、経過観察することになります。
過去にも発作で苦労した人や仕事などの都合で発作を未然に防ぎたい人はESWL(体外衝撃波による結石破砕術)を受けるべきです。
10mm以上の腎結石
自然排石の可能性は低く、尿路感染や水腎症の合併で腎機能が徐々に低下する場合が多いので折を見て手術が必要です。2cm以下の結石はESWL(体外衝撃波による結石破砕術)による治療が行われます。しかし、これより大きな結石は、使用する破砕装置の能力に左右されますが、大きくなるほど、経皮的腎結石摘出術などの内視鏡手術が必要になる可能性が高まります。
ESWL(体外衝撃波による結石破砕術)とは
発生装置で作られた衝撃波は水の中ではほぼ減衰せずに直進しますが、硬い物質や異なる物質の境目では吸収されます。この衝撃波をレンズなどで体内の一点、すなわち結石などの硬い物質に集中させると、エネルギーが吸収され、破壊することができます。2cm以上の大きな結石や、尿管の中ではまり込んで動かない結石、非常に硬い結石などを除いて、90%以上の結石が治療できます。ある程度細かくなれば、尿管を抜けて膀胱まで落ち、次の排尿の時に体外に出てきます。いくら細かくなったとはいえ、固形物ですので、流れ終わるまでに痛みを伴なったり、まれに熱が出たりすることもありますが、多くは一時的です。
治療の副作用(合併症)としては、痛み、発熱のほか、腎臓の場合には被膜下血腫(0.1-1%)を起こすことがあります。これは、腎臓にできた大きな血豆と考えてください。腰痛や微熱、貧血などの症状のほか、まれには腎臓の機能が低下することもあります。この様な合併症の可能性もあるため、当院では入院での治療を原則としていますが、尿管の小さな結石で、すでにESWL治療の経験がある方など、一部の患者さんでは日帰りで行うことも可能です。
衝撃波による破砕術(ESWL)で治療困難な結石について
まず、腎臓、尿管の大きな結石(2-3cm以上)があげられます。その他、尿管の同じ場所に長い間留まっていて、周囲の炎症が強い結石、同じく、腎臓機能が強く障害されている場合、何度もESWL治療をしたが変化のない結石などが、治療の難しい結石となります。単純に尿管結石で2cm以上であれば、困難結石となる可能性が高いと考えられます。この様な場合には、ESWL以外の治療法が必要です。腎臓ないしは腎臓に近い尿管内の大きな結石であれば、背中から腎臓に向けて針を刺して、その針穴を広げて内視鏡用の手術ルートを作り、内視鏡的に結石を砕石・除去する方法(経皮的腎結石除去術=PNL)があります。あくまで一部の患者さまに対する手技ですが、限られた施設でしか行うことはできません。道具、機械のみでなく、出血の危険性もあって高度の技術と経験を必要とする手術です。中部・下部尿管のE治療困難結石では、尿道から尿管に直径2-3mmの細い尿管鏡を挿入して、結石をレーザーなどで細かく砕き、特殊なバスケット・カテーテルで結石片を膀胱まで落とす方法(経尿道的尿管結石除去術=TUL)があります。
使用する内視鏡には、硬性鏡の他、軟性鏡もあって、尿管全長に亘り、結石除去を安全に行うことができます。ただ、比較的簡単な場合もありますが、摘出が非常に難しい結石もあります。特に、困難結石の治療の場合には、内視鏡の種類だけでなく、種々の医療器材を用意して、あらゆる可能性に備えた準備が必要となります。
経尿道的尿路結石砕石術 TUL
内視鏡を使用した治療方法です。尿道から細い内視鏡を入れて尿管または腎臓の結石をレーザーの砕石装置で砕石します。破砕された結石片は、手術中に体外に取り出すことができます。使用される内視鏡は、硬性内視鏡か軟性内視鏡のいずれかで、治療部位により選択されます。治療効果の高い手術として近年増加しています。
軟性尿管鏡とレーザー
手術の様子